「モチベーションが続かないから、英語学習に失敗する」は本当か?
語学学習が続かない理由として、よく出てくる言葉があります。
「モチベーションが続かなかった」
英語学習に限らず、資格の勉強でも、運動でも、ダイエットでもよく聞きます。
モチベーション=やる気。
だから、
やる気がある → 勉強する → できるようになる
という順番で考えることが多いのだと思います。
でも、英語を教えていると、
本当にこの順番なのかな?
と思うことがあります。
むしろ、逆なのではないでしょうか。
英語ができるクラスと、苦手なクラス
私は大学で英語を教えています。
これまで、英語がかなりできる学生が集まったクラスも、反対に英語を苦手としている学生が多いクラスも担当してきました。
当然、英語力にはかなり差があります。
ただ、授業の約3分の2については、どちらのクラスでも基本的なやり方を大きく変えませんでした。
まず基礎的な内容をしっかり説明する。
そして、その内容を使った基礎問題を繰り返す。
問題が終わった学生から持ってきてもらい、その場で私が採点して返す。
ポイントは、
授業をきちんと聞いて、理解して問題を解けば、できるだけ満点に近い点数が取れるようにしていたことです。
もちろん、残りの3分の1程度はクラスのレベルに合わせて課題の難易度を変えます。
でも、基礎部分のやり方は同じです。
すると面白いことが起こりました。
採点を待つ学生の列ができる
問題を解き終わった学生が、
「先生、採点してください」
と持ってきます。
すると、その後ろにまた一人。
さらに一人。
気づけば、採点待ちの列ができます(笑)
これは英語ができるクラスだけの話ではありません。
英語を苦手としている学生が多いクラスでも同じでした。
もちろん解き終わるスピードには差があります。
それでも、ほぼ全員が問題を持ってきます。
では、この学生たちは最初から全員、
「英語を勉強したくて仕方がない!」
という高いモチベーションを持っていたのでしょうか。
おそらく、違うと思います(笑)
「○」が増えると、人は少し変わる
学生に返す問題用紙を見ていると、
最初は自信がなさそうだった学生にも、だんだん○が増えていきます。
すると、
「あれ? できるぞ」
という感覚が生まれます。
前回よりできた。
さっき間違えた問題が、今度はできた。
説明を聞いたら、自分でも解けた。
これは小さなことです。
でも、この小さな「できた」が積み重なっていく。
すると、
もう一問やってみよう。
となる。
そしてまた○がつく。
こう考えると、順番は、
モチベーション → 勉強 → 成功
ではないのかもしれません。
むしろ、
やってみる → できる → 自信がつく → もう少しやってみる → またできる
なのではないでしょうか。
モチベーションは「最初に用意するもの」なのか?
もちろん、目標は大切です。
大学院に合格したい。
TOEICで800点を取りたい。
仕事で英語が必要になった。
そうした理由が、勉強を始めるきっかけになることはあります。
でも、その強い気持ちを何か月も同じ強さで維持し続けるのは、なかなか大変です。
人間ですから(笑)
だから、
「モチベーションを維持しましょう!」
と言われても、
それができないから困っているんですよね。
そこで私は、少し違う考え方をしています。
モチベーションは、成功するために最初から大量に用意しておく燃料ではない。
むしろ、
小さな成功を積み重ねる途中でもらえる、ご褒美のようなものなのではないか。
「やる気」より先に、「自分にもできる」
心理学には「自己効力感(self-efficacy)」という言葉があります。
簡単に言えば、
「自分にもできそうだ」
という感覚です。
私は、語学学習ではこれがとても大切だと思っています。
「英語が好き!」
「絶対に勉強するぞ!」
という気持ちを無理に作るより、
「あれ? 前より分かる」
「これ、自分で解けた」
「前は分からなかったのに」
という経験を作る。
すると自信が生まれる。
自信が生まれると、もう一度やってみようと思える。
その結果、勉強量が増える。
そして、さらにできるようになる。
つまり、
成功 → 自信 → モチベーション → 行動 → 次の成功
という循環です。
逆回転もある
そして、これは逆にも回ります。
問題をやる。
分からない。
また間違える。
解説を読んでもよく分からない。
次の問題も間違える。
すると、
「やっぱり自分は英語が苦手なんだ」
と思い始めます。
自信がなくなる。
やりたくなくなる。
勉強量が減る。
さらに分からなくなる。
そして最後に、
「モチベーションが続かなかった」
という言葉だけが残る。
でも、本当にモチベーションが原因だったのでしょうか。
もしかすると、
モチベーションがなくなったこと自体が、それまでの学習の「結果」だったのかもしれません。
だったら、教師がやるべきことは何だろう?
ここまで考えると、教師の役割についても少し見方が変わります。
学生に、
「もっとやる気を出そう!」
「毎日勉強しよう!」
「目標を忘れないように!」
と言い続けることだけが、モチベーションを高める方法ではないと思います。
むしろ教師ができることは、
「できた」を意図的に作ること。
簡単すぎる問題をやらせる、という意味ではありません。
今までできなかったことを理解して、
練習して、
最後には自分の力でできるようになる。
その経験を、授業の中にきちんと設計する。
私は、こちらの方が大切だと思っています。
やる気があるから、できるのではなく
「モチベーションが続く人だから成功する」
もちろん、そういう面もあるでしょう。
でも、私は授業をしていて逆の流れもたくさん見てきました。
できるようになるから、自信がつく。
自信がつくから、もう少しやってみたくなる。
もう少しやるから、さらにできるようになる。
そして、後から振り返ったとき、
「あの頃はモチベーションが高かった」
となるのかもしれません。
だとしたら、
最初からモチベーションをかき集めなくてもいい。
まず必要なのは、
小さな「できた」を一つ作ること。
そして、それを一つずつ集めていくこと。
モチベーションとは、その途中でもらえる小さなご褒美なのかもしれません。
分かるほど、できることが増えていく。
できるほど、自信と楽しさが増えていく。
楽しいからできる、だけではなく、
できるようになるから、楽しくなる。
私は、語学学習にはそんな順番もあると思っています。

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